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第19話 初めての部活

2021年11月1日

「……放送部。」

「え?」

「だから、放送部!」

「えー!おおー!放送部!?」

「そうです。じゃあね」

「ちょちょちょ、待った待った!え、なんでまた放送部に」

「なんででしょうね」

「えー、めちゃくちゃ意外だな、何、校内放送とかやるってことでしょ?」

「知らない」

「なーんだようもう。えーなんか楽しみだな」

「何が」

「いやいや、頑張れな。初めての部活だろ?」

「そうだよ」

「うんうん」

「じゃあ」

「あー、ちょっと待ったって。なんで電話したかっていうと、1週間くらいカリフォルニア行ってくるんで、その報告」

「ふーん。お土産よろしく」

「なんか欲しいのあるの?」

「何があるか知らん」

「あっそう。まあいいよ、楽しみにしとけ!」

「うん。じゃあね。」

「おー。じゃあな。」

「おやすみ。……気をつけて」

電話を切る。しばらく僕はその液晶画面を見つめた。

放送部。初めての部活。

      

         

「お願いします」

「え、え、真野、」

「……」

「ほんとか。入ってくれるの?えっほんと?」

僕は次の日、朝早く学校に行って、石川先生に入部届を提出しに行った。

「途中でやめるかもしれません」

「え、うん」

「あんまり行かないかもしれません」

「うん」

「あと、僕は基本裏方というか雑用で、お願いします」

「あ、え……いや、なんでもいいよ。入ろうって一歩踏み出してくれたのが嬉しい。いやほんとに。それだけで100点満点です」

「……」

「あー、嬉しいな、よし、今みんな朝の放送やってるから、早速行こうか」

「えっ、今からですか?」

「うん」

そういえば、朝も音楽が流れていたっけ。クラシックが多いけど、たまに昔の曲が流れてたりする朝の放送。

気づいたら、また心臓がドキドキしていた。頭のてっぺんからつま先まで全部心臓になったみたいだ。

放送部の先輩たちは、歓迎してくれるだろうか。僕以外の新入部員はいるんだろうか?あれ、土日も部活あるのかな?ないよね?そこら辺の細かいところを何にも確認せずに入ってしまった。

放送部。初めての部活。

     

         

「おめでとう」

「……」

「そして早速なんだな。すごいな」

1時間目の授業が終わった。前田に、放送部に入部したことを報告せねば、と思っていたがその必要はなかった。

僕は今朝さっそく、しゃべらされたのだ。裏方希望と言ったはずなんだけど……。

「おはようございます。8:15になりました。生徒の皆さんは、教室に入りましょう。」

僕がしゃべった後、放送室内は沸きに沸いた。その場にいた部員の先輩たち3人と石川先生が泣きながら輪を作って踊り出したところで、僕は恐ろしくなってそそくさと放送室を抜け出した。

抜け出したはいいが、放送室から一歩出た途端、急速に自意識が過剰になるのを感じた。校内放送を聞いた人たちはしゃべっていた僕の顔を知るはずもないのに、「さっき校内放送でしゃべっていた僕」という自意識が僕の顔を真っ赤にさせて、前が向けなくなった。

「よかったよ。やっぱお前センスあるんじゃない」

「もう!もういいよその話は!」

前田はおもしろがっているようだ。なんだよもう……先が思いやられる。

「おーい!真野!!!朝聞いたぞ!放送部入ったんだなあ!」

廊下側の窓からバカでかくよく通る声が教室を突き抜けた。

「かっ楓くん!ちょ、やめて、しっしっ」

「なんだよそれー!褒めに来たんだぞ俺―!」

本当にやめて欲しい。もう一言も発さずに大人しく教室に戻って欲しい。程なくして、教室内の女子たちが楓くんを見てじわじわと色めき立ち始めた。

「まあ、演劇部にもたまに遊びに来いよなー!じゃあまた!」

少なくとも今この校内で最も爽やかな時間が流れたんじゃないかと思わせる空気というか残り香みたいなものを残して、楓くんは颯爽と去った。教室内が浄化された。

「……すげーなあいつも。」

「もうなんでもいいよ……疲れた、帰りたい。もうやだ。」

「はやっ」

「なんだよー!全然気づかなかった!全然変わってねーなー!」

楓くんの声がまた耳に飛び込んできた。まだ、いる!

「ははは、相変わらずキラキラしてるな~。劇団まだやってるの?」

「高校入る前に辞めた。これからはここの演劇部に心血そそぐ!」

「そうなんだ」

「赤星は?坊主だから、続けてんだな」

「うん」

「いーなー、また試合ある時教えてよ!」

「ありがと」

うちのクラスの、確か赤星くんと話しているようだ。坊主頭の、赤星くん。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴る。2時間目が、始まる。

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